マンション管理の諸問題
「積極的な努力義務」が推進できない要因-1
管理組合が「積極的な努力義務」が推進されない要因を整理してみます
(1)認識不足
区分所有者(管理組合)の法令に対する認識不足が一番に挙げられます 管理業務は管理組合が主体となり執行しなければいかないという認識が希薄であるということです管理業務は、すべて委託している管理会社がするべきことであるという認識が強く、 「積極的な努力義務」をほとんど認識していないといえます 委託契約により管理業務費用を支払っているため、すべての管理業務は管理会社が対応するべきであるとの理解になっていることが多いようです 「お金を払っているのだから、すべて対応して当たり前」との考えです
(2)知識不足
区分所有者(管理組合)の管理業務に関する知識不足が挙げられます 管理組合役員になっても何をすればよいのか分からない、役員の業務内容が分からない等、 業務内容や知識の基礎となっている法令を全く知らないというのも現状です そのため管理会社に益々「おんぶにだっこ」となってしまっているようです。
(3)成り手不足(無関心)
管理組合役員の成り手が無い、管理組合に関心が無い 役員に成りたくてなったわけではなく、順番(輪番)制のため仕方なく役員になった 責任を取りたくないので、任期中はできる限り何もしたくない 仕事や家事が忙しくて、役員になる時間的余裕などない等、管理組とはできるだけ関わりたくないという声が多いようです
「積極的な努力義務」が推進できない要因-2
「積極的な努力義務」に取り組もうとしているがその術が分からないと言ったこともあります
(1)相談するところが無い
管理業務に関する知識がなく管理会社に一任しているが、「積極的な努力義務」推進に取り組みたいので、管理組合としても最低限度の知識は知っておきたいが、相談できるところが無い相談できる場所が分からない
(2)余裕がない
セミナー等は費用や時間がかかり余裕がなく、情報や知識収集に困っている もっと簡単に、情報や知識を習得する方法を知りたい
(3)何を知っておくべきかがよくわからない
管理組合の管理業務遂行するために、何を知っておくべきかが分からない、等基本的なことがまずわからない
管理会社が「積極的な努力義務」をサポートできない要因
「積極的な努力義務」ができないのは、管理組合だけに要因があるわけではありません 管理業務の委託を受ける管理会社にも、その対応において多くの問題点があると考えられます
(1)経験不足
マンション開発が急増し、「マンション管理士」や「管理業務主任者」等、制度が充実されてきていますが、有資格者の多くは現場の管理業務の実態を知らない、経験が無いということが管理組合への対応のまずさの要因となっています。資格試験には合格しているが実務経験が無く、管理組合の実態に則してどのように組み立てていけば円滑なサポートとなるかが分からない状態にあります
(2)人手不足
50年という半世紀で、500万棟以上の集合住宅(マンション)が開発されました。
平成20年の登録数は2000社以上にも及びます。管理会社の経営の効率化により、「有資格者(マンション管理士、管理業務主任者)」一人当たりの担当管理組合数も20~30件というのが実情です。
更に不況が拍車をかけ、より高い効率追求により、担当件数が増加する傾向にもあります。このような状況から、管理会社が管理組合に対してきめ細かなサポートができづらい環境にあることも事実です
(3)キーマンは管理人
日々現場に密着し、委託された管理業務を実務担当するのが管理人です
一昔前の「管理人のおじさん」とは、戸室のカギや、手荷物を預かったり、玄関先を清掃するという姿を想像させ、法令に基づく管理業務遂行には程遠い内容であったと言えます
然しながら、今日の実態に則した管理業務のサポートにおいて、このような管理人業務では対応できません
管理会社のフロントが、管理組合に十分なサポートができる状態であればまだしも、20件前後の案件を抱えているフロントの状態を考えると、「管理人」の対応が重要な位置づけとなります
修繕、補修工事者における課題点
管理組合が「積極的な努力義務」ができないのは、管理組合や管理業者に要因がありますが、修繕、補修工事を請け負う工事施工業者にも問題があると言えます
(1)説明不足
管理組合(区分所有者)に対して、劣化・瑕疵状態の分かりやすい説明ができていない
同様に、修繕・補修方法や仕様が分かりやすく説明できていない、専門用語を分かりやすく説明できていない等、素人にも分かるような説明がなされていないことが障害になっていることが多いようです
(2)複雑な下請け構造
元受け、下請け、孫請けと工事内容により、下請けへの工事振り分けが複雑に入り込み、誰が工事を施工しているのかが良くわからないということがあります
工事体制を明確にし、現場代理人(元受けの現場責任者)が常駐し、工事を安全かつ予定通りに進めていくことが重要です
当たり前のようですが、中々できていないのではないでしょうか。
(3)分かりにくい費用構造
工事費用代金の分かりにくさが挙げられます 費用明細が添付されていても、単価に妥当性があるかどうかは素人には分かりにくいということです 日々購買し、使用する家庭用品の単価の妥当性は分かっても、工事の費用の妥当性については、全く分からないのが実情です 各工事項目ごとの仕様と単価の妥当性は中々理解しがたいと言えます。